ラスト



9




『消えた子』

きっと彼らはその存在をそう呼んでいたのだろう。
それを口にしたということは、この目の前の男が彼を…
キョン君を取り戻す力を貸してくれるであろう、という希望そのものだった。


「では…!」

思わずガタリ、と音を立てて立ち上がる。
だが彼は僕を制止させた。

「まあ、あわてんなって。
 とりあえずさ、お前らの友達を預かってるやつは今授業を受けてんだ。
 なんせしがない一高校生だもんでね。」

そんな力を持った人間が一高校生とは、とは思わなかった。
もっと強大な力を持った一女子高校生を身近に見ているのだから、無理はないが。

「終わるまでここで待っていればよろしいですか?」
「うん、茶も出なくて悪いけどな。
 呼びに行ってくるから待っててくれよ。」

「…はい。」

手をひらひら、とさせあくまで軽い空気のままで彼は準備室から出て行った。

戸を閉める音が響き終わると、僕は椅子に腰をおろしふっと息をついた。

手掛かりを得ることが比較的容易にできて、安堵しないわけにはいかなかった。
朝比奈さんも先ほどから表情が明るくなってきている。

だが。

「…長門さん?」
長門さんは表情を固くしたままだ。
もっとも、彼女の表情の変化は…彼でないと分からないことは多かったが。
だが、今は僕でもわかる。

彼女がまだ安堵していないことに。


「長門さん…どうしたんですか?」

「…何も。」

彼女は答えなかった。
だが、声はまだ固い。


どうして。

質問を変えてみようかと、口を開きかけた時。


「パイヴァ!!お前また勝手に…って、あれ?
 君たちは…。」

大声を上げながら、おそらくこの学校の教員であろう男性が入ってきた。
先ほどの男が言っていた「先生」だろう、とすぐに把握できた。


だが、彼に現在の状況を説明するのは難しいかもしれない。
今入ってきたときの反応をみると、あの男はこの教員に何も説明していなかったようだから。

しかしその教員は次の瞬間表情を緩めた。


「…よくわからんが、パイヴァの言ってた客は君たちか?
 まったく…ここを私物化するなと言ってるのに…。」

「はあ…すみません。」

「君たちが謝ることじゃない。
 気にしなくてもいい。」

ブツブツと云いながらも、とりあえず僕たちの存在は生徒の客として納得してくれたようだ。

「驚かせてすまなかったな。
 で、君たちをここに連れてきた張本人はどこに行っているか知らないかな。」

「彼なら先ほど授業に行って…。」

その瞬間、チャイムが鳴った。
思ったより早く時間はたっていたようだ。


だがそのチャイムが鳴り終えるか終えないか、といった時に。


「おーっす、おまたせ!」

彼が戻ってきた。
彼がちゃんと授業に出ていたのかつい疑問を持ってしまうタイミングだ。


「あ。センセーもいたの。」
「…お前、ずいぶんと早かったなあ…?」
「あ、あははは、ちゃんと授業は出たぜ?」
「この時間にここに来てか?」


…こんな時でなければ多少は楽しめそうな会話だが、
今はそれどころではなかった。


僕は無礼を承知で口をはさんだ。


「あの…。「そんなこと今はいいでしょ。」」


僕の声にかぶさるようにもう一人、別の声が響いた。


パイヴァという彼の後ろから、長髪の、美少女といっていもいいだろう。
女生徒が顔を出した。


「この人たち?『消えた子』を追っかけてきたのは。」


その言葉に、僕たちは身をすくませた。



どうやら彼の魂の持主がそこにいた。



                             To be Continued…



オリキャラばっかりでつまらないかもしれません;すみません。
とりあえず魂の管理者っぽい女の子登場です。

それにしてもハルヒとキョンを抜いたSOS団って…自分で書いてて不思議な感じです;



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